2025.06.23
自立訓練(生活訓練)事業所が目指す「自立」とは~日常生活と仕事の両面から支える支援のかたち~

「自立」と聞くと、「誰の手も借りずに一人で生活し、働けるようになること」といったイメージを持たれる方が少なくありません。しかし、自立訓練(生活訓練)事業所が目指す「自立」は、もっと柔軟で、多様な状態を含みます。
精神的・身体的に困難を抱える方が、「できないことを無理にできるようにする」のではなく、「自分らしく、安心して生活できる選択肢を持ち、自分の意思でそれを選んでいけるようになる」こと。それが私たちの考える 自立 です。
そのために、日常生活の基礎から社会生活、そして仕事に関わる支援までを、一人ひとりの状況に合わせて段階的にサポートしていきます。
日常生活における「自立」

〜生活リズムの安定と、自己管理の力を育てる〜
自立の第一歩は、生活の土台を整えることです。多くの方が生活リズムの乱れや睡眠障害、食生活の偏り、入浴・掃除・買い物といった日常生活の継続的な実行に困難を感じておられます。
たとえば以下のような支援を行っています。
・規則的な通所を通じて昼夜逆転を改善し、日中活動への体力と意欲を養う
・セルフケアの習慣化(食事・入浴・清掃・服薬管理など)を小さな目標から積み重ねていく
・生活記録や日誌などを使い、生活状況の「見える化」と自己理解につなげる
・「できたこと」に焦点を当てたフィードバックを通して、自信と自己肯定感を回復する
生活リズムが整ってくると、心身の不調も緩和され、次のステップに踏み出すための「余裕」や「準備力」が生まれてきます。
仕事における「自立」

〜自分らしい働き方を見つけるための準備〜
「いつかは働きたい」「もう一度働きたい」 そう考える方の多くが、次のような不安を抱えています。
- 長期間のブランクがある
- 対人関係に自信がない
- 職場でうまくいかなかった経験がある
- 再発を防ぐための工夫がわからない
そこで、自立訓練ではいきなり職場に出るのではなく、段階的に「働く自信」と「実行力」を育む支援を行っています。
・自己理解の促進:ストレスの傾向、得意・不得意の整理、これまでの経験の振り返り
・模擬的な活動:軽作業・ボランティア・事業所内での役割体験などを通じて、体験的に働く力をつける
・職業準備スキル:時間管理、指示理解、報告・連絡・相談の練習など
・対人スキルの向上:アサーションやアンガーマネジメント、グループワークなどを通じて、対人関係の課題に取り組む
また、「フルタイムで働く」ことだけがゴールではありません。短時間の就労や福祉的就労、在宅ワークなど、「自分らしい働き方」を模索する支援も行っています。
このように、生活訓練では、日常の基盤を整えることと、社会参加や就労につながる準備を「両輪」として支援しています。その人のペースに寄り添いながら、段階を追って、「できること」を増やし、「やってみたいこと」につなげていく。それが、私たちの支援のあり方です。
事例紹介

以下に、支援事例を紹介します。
事例1 :社会生活における支援を重点的に行ったケース
Aさんの状態・ニーズ
- 数年間自宅にこもっている。
- 家族以外との会話は無い。
- ゆくゆく就労をしたいが、まずは地域社会で活動していく能力を身に付けたい。
支援のステップ
①利用開始当初は、週に1~2回など少ない日数から通所をはじめ、日中活動するための生活習慣の基盤を作ることを目指しました。この段階では自立訓練(生活訓練)事業所で行われるプログラムへの参加は積極的に行わず、集団の中で無理なくできる範囲で活動を行いました。
②生活習慣の基盤を作り事業所に通うことに慣れてきた後は、スタッフを介してプログラムへ参加し、他者とコミュニケーションをとったり自己開示をする機会を作りました。
③事業所の利用の後半では他の利用者の方々と同じペースで訓練に参加し、日中に活動するための体力や社会生活を行う上で必要なコミュニケーション能力などを身に付けました。
これら3つの段階を経て、Aさんは無事に就労のステップへと移ることができました。
事例2 :生活習慣における支援を重点的に行ったケース
Bさんの状態・ニーズ
- メンタル不調により、頻繁に休職している。
- 生活リズムが崩れている(昼夜逆転)。
- 身の回りのことや食事、入浴など生活に必要な活動を行えない。
- 復職へ向けて、日常生活を整えたい。
支援のステップ
①最初に、毎日の通所を通して昼夜逆転だった生活を少しずつ改善し、日中に十分な活動ができる状態を目指しました。生活リズムが整っていくうちに、規則正しい生活を送ることの重要性が理解でき、それまでできていなかった家事に取り組むなど自己管理能力が身に付いていきました。
②生活習慣が整い、体調が安定してからはスタッフと相談しながらその後の働き方などについて以下の点を考えていくようになりました。
・休職理由の分析
・再発予防策の立案
・周囲への配慮事項の整理
上記に加えて、自身に必要なストレスケアやセルフケアも習得することで、Bさんは無事に復職に至りました。
事例3:復職に向けた支援を重点的に行ったケース
Cさんの状態・ニーズ
- 会社勤めをしていたが、うつ病を発症し休職。
- 医師から復職可能との診断が出たものの、「本当に働けるか」「再び倒れてしまわないか」という強い不安がある。
- 復職支援のプログラム(リワーク)も検討したが、いきなりフルタイムのような環境に戻ることへの抵抗感があり、まずは生活リズムや自信を取り戻したいと考えている。
支援のステップ
①利用開始当初は、短時間・短日数の通所からスタート。
起床・通所・昼食・帰宅という「1日の流れ」を作ることを最初の目標としました。職場復帰と同じ時間帯に家を出る練習を通して、生活リズムを整えるとともに、「毎日外出する習慣」を身体に思い出させていきました。
②生活リズムが安定してきた段階で、復職に向けた気持ちの整理と体調のセルフマネジメントに取り組みました。
Cさんは、休職に至った当時の状況を振り返りながら、「何がきっかけで不調が悪化したのか」「自分の限界をどう見極めるか」といったテーマについてスタッフと一緒に言語化を進めていきました。認知行動療法的な視点から、ストレス時の思考パターンや対処行動も整理。再発を防ぐ「自分なりのルール」を言葉にしていくことで、少しずつ「もう一度働けるかもしれない」という気持ちが芽生えてきました。
③復職を想定したプログラムへの段階的な参加と、実際の職場との調整支援を行いました。
復職に向けては、集中力や対人コミュニケーションの練習として、グループワークへの参加を増やし、簡単な報連相や役割分担など、仕事を意識した動きも少しずつ練習しました。並行して、主治医や会社との情報共有も行いながら、復職前の職場面談に備えて必要な情報を整理。事業所スタッフもCさんと一緒に復職面談の準備を行い、実際の面談では付き添い・同席も行いました。
④復職後も「再休職をしない」ための支援を継続。
無事に時短勤務で復職したあとも、週1回の通所を継続し、仕事の疲れやストレス、周囲との関係性などを振り返る機会を設けました。Cさんにとっては「仕事以外の安心できる場所」として事業所が機能し、結果的に体調を崩すことなく安定して職場復帰を果たすことができました。
このように、自立訓練(生活訓練)事業所では、利用者一人ひとりの状態やニーズに合わせた支援を行っています。日常生活の基盤を整えることから始め、社会参加や就労に向けたステップを踏むことで、利用者が自分らしく生きる力を育んでいきます。
ご興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
杉並区で自立訓練(生活訓練)をお探しなら「いちきゅうリワーク」で
自立訓練(生活訓練)事業所「いちきゅうリワーク」
「いちきゅう」は、心の病気や発達障害がある方が、生活リズムや人との関わりを少しずつ整え、自分らしい毎日を取り戻していけるようサポートする場所です。
「無理なく、できることから少しずつ」を大切に、安心して過ごせる環境を整えています。
【たとえばこんな方に】
・休職中で生活リズムを整えたい
・働く前に、安心して通える場所がほしい
・毎日を楽しむきっかけがほしい
【主なプログラム】
・ウォーキングやストレッチ
・生活習慣づくり(睡眠・家事など)
・コミュニケーショントレーニング
・就労準備・対人スキルの練習
・カードゲームなどの余暇活動
毎日の過ごし方は、一人ひとりに合わせて無理なく調整。
ちょっとした不安や悩みも、スタッフと一緒にゆっくり整理していけます。
・荻窪駅北口から徒歩2分
・18歳〜65歳未満の方が対象
・障害者手帳がなくてもご利用可能(※医師の診断・通院歴がある方)
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